佐々木寿美映の一言

2022.04.03

ひろしま美術館

近頃、名刺アプリのアップデートが多いので
“名刺は財産である” と保管していた40数年分の名刺に
思いを馳せながら目を通してみた。
思い出深い方々の顔が浮かんでくる。
“NGの人” と書き込んである名刺もあり、苦笑してしまった。

その中に、ひろしま美術館 初代館長の井藤勲雄氏の名刺もあった。
約40年前に美術館の仕事でご一緒させていただいた際に、
「この建物は私が設計したものです」ともお話しされていて、
なぜかその強い眼差しと存在感に圧倒されたのを覚えている。

ひろしま美術館はルノワール、モネ、マティス、セザンヌ、ゴッホなどなど名画を多く収蔵していて、
1978年、戦後30年あまりを経て開館されたという。

広島に原爆が落ちた一年後、井藤氏が川沿いを歩いていた時に
数十年は草木も生えないだろうと言われていた広島の地に
赤い夾竹桃の花をみつけ “美しいものには人の心を動かす力がある” と感動し、
広島の人々を美で癒したいと強く願い、情熱を注いで奔走して、
その絵のほとんどを一人で収集したとのこと。

また、世界各地の美術館も視察して、本館は原爆ドームをモチーフにした円いドーム型の建物、
その周りには水をたっぷり湛えた水路を配し、“鎮魂”と“癒し”を願ったのだそう。
そのことは数年前、近衛はなちゃんが美術番組の取材で訪れ、私も知ることができた。

現在、ロシア・ウクライナの戦争の惨状が毎日報道され、被爆国 日本の役割が問われているが
約40年前に圧倒された、館長のあの強い眼差しと存在感は、
反戦への強い思いの表れでもあったのではないだろうか、と思ったりしている。

ひろしま美術館 初代館長 井藤勲雄

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