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2020.02.28
近衛 はな シネマ倶楽部

映画の境界を探る ワークショップと映画創造

セブンシネマ倶楽部「映画の境界を探る ワークショップと映画創造」

ゲスト
江本 純子さん(劇作家・演出家・俳優・映画監督)
杉田 協士(映画監督)

 

2012年4月から始まった、セブンシネマ倶楽部は今回の2020年2月8日の回で終了となりました。
長い間、ありがとうございました!!

今回は、映画監督のお二人、杉田協士さんと、江本純子さんにゲストにおいでいただきました。
お二人は、世界観はずいぶん違いますが、独自の「つくりかた」を生み出し、
その「つくりかた」が表現の核心にもつながっている、そんなアーティストです。

実は杉田さんには、十年以上前に世田谷美術館での映画のワークショップでお世話になったことがあり、
それ以来ずっと作品を拝見してきました。
最新長編『ひかりの歌』はとても素晴らしい作品です。私は映画館に二度もいきました。

今回は、即興でつくられた短編『かもめ』、ワークショップから生まれた作品『席のむこう』
(杉田さんはカメラ)をもってきてくださいました。
なんともみずみずしい作品でした。
じっと人をみつめ、だんだんと関係性がみえてくる、ぐわっとくる、杉田ワールドでした。

江本さんは、「毛皮族」「財団江本純子」で演劇をつくっておられる劇作家、演出家でもあります。
近年では、瀬戸内海の小豆島で地元の方々といっしょに演劇をつくるプロジェクトもされています。

大切にされているのは、「即興」。
映画『過激派オペラ』につづく映画の2作目となる『愛の茶番』は、なんと全編即興をベースにつくられる映画。
監督は当日やってきたその場に居合わせた人に、ストーリーの骨格となる「年表」を渡し、
配役やスタッフとしての役割をあたえ、台本なしで役を生きさせる……という、
なんとも手荒な、しかしなにやらすごいことが起きそうな……そんな作品を制作中なのです。

今回はメイキングを見せていただきましたが、あんなに目の離せないメイキングはなかなかあるものではありませんでした。
現場では、居合わせた人々による激論がたたかわされ、謎の緊張感がみなぎり……いやはや。

もちろん、どんな作品になるのか出来上がりも楽しみですが、制作プロセスにすでに脱帽。
あの非効率のなかから生まれる生々しさは演劇をずっとされてきた江本さんならではの新境地だと思います。
お二人が大事にされているのは、映画制作をつうじて、参加者が変化していくこと、
人間の間から新しく生まれ出る、予測不可能な「なにか」なんだろうと思います。

さて。2012年4月から続けさせていただいていた、セブンシネマ倶楽部、この74回目をもって終了となりました。

かれこれ8年!!ほんとうにたくさんの映画人にゲストにおいでいただきました。
思い返すと、たくさんのお顔がうかび、いただいた言葉がよみがえります。
映画を愛する者のひとりとして、映画人たちと交わり、その創作についてじっくりお話をうかがえる、
こんなに幸せなことはありませんでした。

いまふっと思うのは、映画人って、人間が大好きな人ばかりだな……ということです。
人間の感情、人間関係への興味が半端ない。
でも「○○さんはほんとうに人間がお好きなんですね」なんてストレートに訊いたら、「いやいや」と否定されてしまう……。
映画人は、シャイで、さびしがりやで、とびきりチャーミングな人種です。

表現するということは、結局のところ、その人の心の一番奥底のものが出てしまうものだから、
映画人はやはり人が好きすぎて、自分の内面をさらけ出すような人ばかりなのです。
だから、映画は愛すべき芸術なのだと、私は思います。
この世界に映画があって、ほんとうによかった。

しゃべり下手な私が、こんなにながく対談の機会をあたえられるなんて思いがけないことでした。
ゲストの方から、そしてお客様からも、多くの刺激をいただき、気づきをあたえられました。
この講座がこんなに長期間つづいたのは、コミュニティーカレッジのスタッフの皆さんの並ならぬご尽力、
映画という文化へのあつい情熱があったからです。
この講座に関わってくださった皆さんに、心からの感謝を。そして拍手を送ります。
ありがとうございました!!

 

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