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2014.01.11
近衛 はな シネマ倶楽部

小津安二郎生誕110年・没後50年記念「周防正行監督 私の小津安二郎監督案内」

小津安二郎生誕110年・没後50年記念「周防正行監督 私の小津安二郎監督案内」

ゲスト
周防 正行さん(映画監督)

 

今回は、周防正行監督においでいただきました。
テーマは、世界のOZU!!

周防監督は、小津さんのスタイルを徹底的に模倣した
作品「変態家族 兄貴の嫁さん」(小津調ピンク映画’84)、
「サラリーマン教室 係長は楽しいな」(テレビドラマ’86)
を撮られています。
かなりの衝撃作で……目から鱗。すごく面白いのです。

還暦のお誕生日に亡くなったという、小津安二郎。
生誕110年、没後50年をむかえ、いま改めて作品が見直されています。

それにしても、どうして世界中の監督が小津に惚れ込み、
「小津のように映画を撮りたい」なんて言うんだろう…
じつは、私にはこれまでさっぱりわからなかったのです。

2012年、英国映画協会発行の「サイト・アンド・サウンド」誌が発表した、
世界の映画監督358人が投票できめる世界で最も優れた映画で、
「東京物語」が1位になりました。

ヴィム・ヴェンダースも「東京画」を撮っているし、
アキ・カウリスマキは自分の墓に「生まれてはみたけれど」と刻むと言ってます。
ジム・ジャームッシュやホウ・シャオシェンも小津さんに憧れているんだとか。

今回、周防監督のお話を伺って、なるほどと思いました!

「どこかのシーンを一目見ただけで、それが小津作品だとわかる、
そんな比類のないスタイルをもった監督は世界中どこにもいない」
んーたしかに!そうかもしれません。

小津さんの映画には洗練された作法があって、
それは一目で、小津さんのものとわかる。

しかも小津さんは自己主張しているわけではなく、
形式は映画と渾然一体となっている。
それってすごいことなんだなぁ。

世に言う「小津調」……
カメラ位置、編集、音楽の使い方などテクニカルなことから、
小津作品の時間の流れかたについて、
……じっくりお話を伺いました。

小津さんは、同じようなテーマを繰り返し描きながら、
映画でなにがしたかったのか。

周防さんはおっしゃっていました。
「生まれるときも死ぬときも一人、
人間は孤独だからこそ、せめて生きている間は誰かと一緒にいたいと思う。
それが小津映画の根底にある思想です。
初めて「秋刀魚の味」をみたとき、小津のユーモアに惹かれた。
映画がずっと終わらなければいいと思った」

ほんとにそうだなぁと思いました。

徹底的に小津スタイルを真似し、その制約のなかで映像をつくってみて、
周防監督は、「個性は出すものではなく、隠そうとしても出てしまうもの」
だと気づいたのだそうです。

年末年始にかけて、私はずうっと小津映画を観ていました。
私は小津さんにははまらないだろうと思っていましたが、
それは間違いでした。

だんだんわかってきてしまったのです、
小津ワールドに浸る幸せが。
次から次へDVDに手が伸びました。

小津映画のなかの、おじさまたちのおかしさ。
小粋なユーモア、心地よいテンポ。俳優陣の魅力。
杉村春子さんがでてくるとにやけてしまう。

ずっと観ていたくなる、不思議です。 説明しない。省かない。
大胆に時間をとばす、面白いなぁ。言葉遣いも、いいんだなぁ。
うっとりしながら観て、泣いたり笑ったり。

なんでこんな他愛ない会話でシーンになるのか、
どうしてこんな話が映画になるのか。 なんでこんなに心が動くのか。
ああ映画って…!
話の内容とかは、もはや大事ではないような気すらしてきました。

私はようやく小津ワールドの入り口に立ったところ。
これから繰り返し観ることになりそうです。

今回、面白いなぁと思った作品をご紹介しておきます。
「生まれてはみたけれど」チャップリンなみの可笑しさ、哀しさ。
「晩春」笠智衆はサイコーのお父さん。
「秋日和」岡田茉莉子に翻弄されるおじさまたちがいじらしく…。
「秋刀魚の味」岩下志麻の美しさは尋常でなく、極道でもない。
「宗方姉妹」田中絹代と高峰秀子の姉妹、
性格がかけ離れているのに一心同体のような姉妹…
(リメイクしたらどうなるんだろう…)
「早春」「非常線の女」「浮き草」「お早よう」も。

小津さんの映画は、どの作品もほかの作品に対して
ひらかれているみたいなので、 続けて何本かみてみると、
さらに楽しめるような気がします。

周防さんは、久々に「サラリーマン教室 係長は楽しいな」をご覧になり、思ったそうです。
「自分の最後の作品では、もっと徹底的に小津さんを真似たのを作りたくなった」
最後とはおっしゃらず、ぜひ作っていただきたいです!!

 

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